徒路(かちじ)の人々
1話目 ふさ子さん
朝の通勤 向こうからやってくる自転車の女性
年のころ40歳前後
毎朝ではないがだいたいの確率で目にするので
勝手に「ふさ子さん」と呼んでいる
長い黒髪を振り乱しすごい勢いで自転車を漕ぐ
そのスピードといったら歩いている人ばかりか
自転車の高校生ですら抜き去るほど
緊張のオーラに包まれている
まさに何かに憑りつかれているよう
ある夕方 復路のふさ子さんを見かけた
その時もまさに「一心不乱」 すごい迫力だ
歩いている人ばかりか自転車の高校生ですら抜き去るふさ子さん
おそらく
いや十中八九 私のことは知らないだろう
おしまい
2話目 KOIKE
10分くらいの朝の徒歩通勤
同じ時間 同じ場所で出くわす作業着の男性 年のころ40代後半
ほぼ毎日 コンビニ袋を手に下げている
彼も通勤中であろう 私と同じ方向に向いて小走り
急いでいるようにも見えるが
徒歩の私が抜いてしまいそうな遅さだ
そんな彼を「コイケ」と呼んでいる
ある曇り空の日 傘を持つコイケ
危ない持ち方で小走りしていたのを見て
どうか子供に当たりませんようにと願う梅雨入りの朝
おしまい
3話目 サブロウ
以前ここで「六さん」を紹介した
その六さんとたまに一緒に歩いている50代後半ごろの男性
「三郎」と呼ぶことにした
三郎も徒歩 いつもくわえタバコ
通勤路の地下トンネルがケムリっぽかったら
おおむねヤツが通ったあとだ
この時代に歩きタバコなんて
迷惑なヤツだと思っていたが 最近姿を見ない
そういや六さんも見なくなった
同じタイミングで見なくなった2人
達者であろうかと ふと思い出す初夏の朝
おしまい
Jakeおの