葉桜になる頃に思い出す、 あのソフト麺の味。
ある朝、リビングから妻と息子(7ヵ月)の楽しそうな声が聞こえた。
妻「も~~~。 ○○ちゃんやめてよ~」
息子が妻のネックレスを掴んで舐めている。
息子はネックレスが好きで、よく舐めてくるそうだ、
――― ふと、私の頭の中に妻にネックレスをプレゼントした時の事が、頭を横切った。
このネックレスは大学時代、
妻と付き合っていた頃、
私から妻へクリスマスプレゼントとしてあげたものだ。
もう10年近くになる。
クリスマス前にバイト代が振り込まれ、財布がホクホクの状態で
妻と2人で仲良く百貨店にクリスマスプレゼントを買いにいった。
当時の私の全財産が5万数千円。
ショーウインドゥの前に到着し
妻「プレゼントいくらまでなら大丈夫???」
と聞かれた。
4万以上だと、年末までの生活費に困ってしまう・・・
私は百貨店に来る前から上限4万円と心に決めていた。
しかし、妻を目の前にして、なぜかよけいな見栄を張ってしまった。
私「う~~ん。4万~~、いや、ご、5万でもいいよ」
もちろん妻は5万円のネックレスを選んだ。
ホクホクの財布が空になった。
大晦日に実家に帰省する予定にしていたが、
その日から、大晦日までの間、生活費に困り・・・
CDや本を売り、私はとにかく食費を切り詰める事にした。
カップ麺を買うのも、躊躇する金額しかなく、
当時テレビでやっていた貧乏番組を参考にし、
スーパーで売っているソフト麺(15円~20円ぐらい?)を口に入れ、
麺つゆを少し口に入れるという料理でなんとか大晦日まで耐えしのいだ。
その話を数年後、妻に話すと大変笑ってくれ、
ほぼ毎日ネックレスをしてくれている。
そんな2人の思い出が詰まったネックレスを、
息子は嬉しそうにペロペロと舐めている。
K.O